[渓流と湖の釣り/IN THE FIELD vol.8]教科書の人

渓流ルアーのアマゴ釣り

教 科 書 の 人

 

学生時代、教科書に出てくる人物を覚える事にえらく苦労した記憶があります。
詰め込む様に覚えた歴史上の賢人達。
今では何時の時代にどんな活躍をした人なのかきっと思い出せないのではないかと思います。

しかし、釣り雑誌に登場する有名アングラーであれば、その方のタックルやメソッド等すんなり頭に入ってきて、いつまでも覚えていられるから不思議であります。
僕の記憶力が良いのではなく、学校の教科書よりも真剣にじっくりと読むからだという事は言うまでもありません。

そんな僕の記憶に深く刻まれた人物の一人。
老舗ルアーメーカーであるジャクソンのスタッフ、河西幸彦氏が挙げられます。

河西幸彦氏の釣り

氏によってリリースされたルアーを紹介させていただくと、名作アスリートミノーをトラウト向けにリニューアルした ”トラウトチューン” や ”トラウトチューンヘビーウェイト” そして ”トラウトチューンリップレス” 。

更には渓流用バイブレーションの先駆けとなった ”カイモ” 。
それから糸ヨレを軽減する様に設計されたスピナーの ”エディ” 。
現在エリアフィッシングで大ブレイク中の ”ダートマジック” 。
そして新たな定番となりつつあるミディアムリップを採用した ”奏” 。

氏は、このように不朽の名作から独創的なアイテムまで多くのアングラーに愛されるルアーを世に送り出してきた人なのであります。
僕が毎号欠かさずに購読していたトラウト雑誌ではそれらのアイテムの使い方や釣行の模様が掲載されていました。
釣行エリアも東海甲信地方とほぼ同じ場所で釣りをしていた事から現場のリアリティーが伝わりいつも参考にしてきた、正に教科書の中の人なのでありました。

渓流ルアー

 

共に想う渓流

縁あって電話や、ジャクソン社にお邪魔させていただいてお話をする事が有り、『いつかご一緒したいですね』と言ってはいただいたものの、中々その機会には恵まれずに月日が経ちました。
ところが、今年の4月に釣りビジョンの収録でお会いした事をきっかけに『今年こそ行きましょう。』と半ば無理矢理に予定を抉じ開けて、渓流釣行の都合をつけてくれたのでありました。

釣行河川は、あえてお互いに経験の浅い天竜川水系を選ばせてもらいました。
理由は単純で、見たことの無い景色の方が楽しいからという訳です。

水車のある渓流釣り

 

水無月の渓流

当日は、雨予報だったにも係わらず日の出前にパラパラと降っただけでレインウェアは着ずに済みました。
しかし、川は渇水気味で石の表面に発生したヌメりでツルツルと滑りました。
この水量は魚の活性にも影響していた様で、極度のショートバイトに悩まされたのでした。

川床のヌメリ

 

河西さんは僕に気を使ってくれて 『どうぞ先にやって下さい』と言ってくれたのですが、低活性に加えて僕が与えるプレッシャーにより更なる苦戦を強いられていた様です。

河西幸彦氏のキャスティング

 

開始から一時間程でお互いに魚をキャッチして、何となくの今日の状況を把握し始めました。

アマゴ釣り

経験豊富な河西さんの釣りからは、魚の付き場をよく見ているなと感じました。
緩流帯よりも流心を通す事で、手のひらサイズよりも少し大きいのが反応する様だと分析したようです。

一方僕はというと、先行して歩かせてもらっているアドバンテージをフルに活かしてイイ所を狙い、テンポよく釣りあがりました。
更に渓相の良さも手伝ってドンドン先に進みます。

静岡県天竜川水系のアマゴ釣り

静岡県天竜川水系のアマゴ釣り。渓相

 

サイズの割に体高のあるアマゴのヒットがありました。
実は今シーズン尺物のアマゴに恵まれていない為、ヒットの瞬間の重々しい手応えはついつい期待してしまいましたが、尺には遠く及びませんでした。
ただ、6月も梅雨入りしたばかりのこの時期にこれだけのプロポーションの魚がいるのであれば、今後に期待が持てそうだと密かに思うのであります。

渓流ルアーで狙うアマゴ

 

所々に落ちている動物の骨は猟友会の人達の獲物かそれとも、自然の厳しさに打ちひしがれたものなのか・・・。

釣行中に見つけた骨

 

はなまるのアマゴ

午後1時を過ぎた頃でしょうか、ようやく納得のいくサイズのアマゴがきてくれました。
やはり尺には届きませんが、錆の残った美しいアマゴに大満足であります。

渓流ルアー釣りのアマゴ

この時先行していた河西さんに駆け寄り「釣れましたよ~」と声をかけたところ、『流石ですね!』と言いながらも、やられた~といった表情だったのが印象に残っています。

まだまだ先に進みたいところではありましたが、今日のところはこの辺で退渓することといたしました。
知らず知らずの間に随分と歩いてきたものです。

静岡県天竜川水系の渓谷

車に戻るまでの間、色々なお話を聞かせて頂きました。
やはり、世に多くのルアーを送り出してきただけあって色々なノウハウをお持ちで、ただただ感心するばかりでしたが、ほんの少しだけ僕の意見を聞いてもらったりと濃密な時間を過ごす事が出来ました。

そして最後は、『今度はイワナ狙いで行きましょう』 と約束を交わして川を後にしたのでありました。

 

タックル

ロッド:ジャクソン カワセミラプソディー502L
リール:シマノ ツインパワーC2000HGS
ライン:YGKよつあみ G-soul PE X-3 0.4号
リーダー:YGKよつあみ ニトロントラウトグレン 5lb
ルアー:ジャクソン 奏50/トラウトチューンHW / 自作フローティングシャッド50mm

ランディングネット:RoughStreamネットS

撮影機材
カメラ:Nikon D3100
レンズ:NIKKOR 40mmマクロ

渓流ルアーのタックル

 

[ロケーション] 静岡県天竜川水系

木下 進二朗

PHOTO & TEXT

[IN THE FIELD] The second angler
木下 進二朗

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