The Middle of Journey Story.1 [渓流と湖の釣り/IN THE FIELD vol.48]

鱒を育む森

The Middle of Journey Story.1

 

釣人は旅人でもある。

その旅に終わりは無く・・・

釣人は永遠に旅を続けるのです。

理想と現実の間で夢を描き求め続けて・・・

かく言う私も釣人。

いつも旅の途中である。

そんな一人の釣人がどんな旅をしているのか、旅の途中の様子を時折り綴っていこうと思う。

私的釣旅風景 -The Middle of Journey-

 

イワナの渓

 

Season 2019 の旅路はこんな感じだった・・・

真夜中に目覚ましが鳴る。

眠い目を擦りながら着替えを済ませ、早々に車に乗り込み目的地へ向かう。

コーヒーを飲みながら暗闇の中を走る車内にはお気に入りのJAZZ。

今年は『Eric Alexander Quartet』の【Sunday In New York】を聴くことが多かった。

不思議と眠くはならない、アドレナリンが出ているせいだろうか。

今日はどのような釣りをしようか。

どんな渓魚に出会えるだろうか。

思いを巡らせながらハンドルを握る。

釣行日の始まりはいつもこんな感じだ。

目的地に到着すれば、はやる気持ちをグッと抑えながら入渓準備を進める。

ウェーディングシューズの紐を締めるのも毎回の儀式のようなものだ。

バックパックにカメラ機材が入っているのを確認すれば準備は完了。

この時にいつも思う、カメラ機材は重い。。。

バッテリーグリップ付きの一眼ボディー、レンズは標準ズーム・24mm単焦点マクロ・超広角ズームを各1本づつ、フィルターを数枚、中型で比較的コンパクト?になる三脚を1本。

カメラが趣味の方ならこの機材の重量はだいたい想像できるでしょう。

そしてその度に自分に言い聞かせる〝写真のためだ我慢しろと・・・〟

慎重に川辺へ足を進めると、

そこには清らか流れが横たわっている。

日常から解き放たれた瞬間。

 

ファインダー越しの渓

 

この瞬間が最高だ!

胸いっぱいに澄んだ空気を吸い込んで釣りを始める。

その日の一投目はドキドキするもので動作がぎこちない。

一投目からチェイスでもあろうものなら一気にテンションが上がり、逆に何も反応がなければ不安が脳裏をよぎる。

少しずつ歩みを進めながら良さそうなラインをトレースする。

一瞬渓魚の姿が見えると同時に生命感が伝わりロッドが弧を描く。

小気味良い引きを楽しみ丁寧にランディング。

ネットの中に収まったその美しい容姿に心奪われる。

あぁ、なんて美しいんだろう。

その色彩美には魔性の魅力があって釣人の心を鷲掴みにしてしまう。

この容姿を眺めるために遠く山奥へ通ってしまうのだ。

不思議なもので、何度出会っても飽きることはない。

 

イワナと釣人

 

渓魚が弱らないよう水通しがよい生簀を作り、急いでカメラを準備して撮影する。

この時間もまた自分にとって大切な時間。

美しい渓魚の姿を出来るだけ美しく写真に収めたい一心でシャッターを切る。

 

渓魚とベイトロッド
潜んでいたイワナ

 

速やかに撮影を済ませたら、渓魚をそっと流れに還す。

名残惜しさはこの上ない。

遊んでくれてありがとう。。。

リリース

 

渓魚が元気に還ったのを確認できたら、周辺の風景を撮影するのもまた楽しい。

カメラは渓魚を撮影するために使用したので既に準備済み、実のところ風景を撮影するためだけに準備をするのは億劫だったりする。。。

時には流れの中に三脚をセットして美しい渓の風景を撮影していく。

ファインダー越しに見える渓の風景もまた格別、どの場所をどんな設定で撮影しようかと考えながら風景の一部を切り取る。

 

静寂の渓

 

堤の上のプール
渓流のゆらぎ

 

そんなことをしているから当然歩みは遅くなってしまうが、それが自分なりの渓の楽しみ方。

ゆっくりと時間をかけて歩きながら体全体で渓を感じるのが好きなのです。

だから、夜明けと共に入渓しても車に戻ってくるのは夕刻になってしまうのが常。

着替えが済む頃にはすっかり陽も沈んでしまう。

自宅への帰路は心地良い疲労感と渓を満喫した充実感でいっぱいだ。

写真を現像するのも楽しみでならない、自分が思ったように撮れているだろうか?

そんな思いを抱えながら家路を急ぐ。

朝とは一転、さすがに疲れから睡魔が頭を擡げてくるがアップテンポなJAZZと辛いガムで凌いで帰宅。

風呂に入れば爆睡はいつものこと。。。

翌日はデータをPCに取り込んで現像作業。

私の場合、記録形式は『RAW』

『JPEG』で撮ることはまず無い。

考えられる限りの最高画質で思い通りの設定で画を収めるには『RAW』が必然なのです。

そして『RAW』データは現像作業を経てから『JPEG』に変換することで初めて多くの機器で目視することができるようになります。

撮影時の設定ダイアルも必ず『M』マニュアルです。

シャッタースピード、絞り、ISO感度、色温度など、全てを自分の意思で決めてシャッターを切るということ。

それが『自分の1枚』になる。

そう私は信じています。

一枚ずつ確認しながら記憶したイメージに近くなるように調整して変換保存していきます。

後に見た時に記憶が呼び起こされるような印象的な一枚に仕上げたい。

そう思いながら丁寧に作業すると一枚一枚がすごく愛おしくなってくる。

 

ヤマメとベイトタックル

惑星のようなイワナの瞳

ヤマメとスピニングタックル

 

写真って素晴らしいな、といつも思う。

動画も良いけど、その一瞬を切り取った『写真』が私は好きだ。

撮影者の意図や思いがその一枚一枚に込められているように感じるのです。

ファインダーの隅々まで気を配り慎重にシャッターを切った一枚

『釣り』を『渓』を『魚』を『愛する心』をこれからも撮り続けていきたい。

それが『釣人の旅』の記録となるから。

さぁ、Season 2020に向けて『旅』の準備を始めようか。。。

 

 

入部宏之プロフィール

PHOTO & TEXT

[IN THE FIELD] The 7th angler
入部 宏之

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