年に一度は耐えられそうに無いから [渓流と湖の釣り/IN THE FIELD vol.32]

渓流ルアーフィッシング

年に一度は耐えられそうに無いから

 

相棒のお手柄

「遊漁券を今日と明日の日付でお願いします。」

小さな商店の女将さんが慣れない様子でごそごそと箱を取り出して、ガラス戸に張られたカレンダーにちらりと目をやると「6日と7日だね」と確認を取る様に言いながら券に日付を入れてくれました。

二枚目の券に日付を書き終えたのを見て、ついつい「七夕ですね」と声が漏れてしまいました。
その先の話しの展開を全く考えておらず、見た感じ釣りには興味の無さそうな女将さんに「釣れてますか?」と尋ねるのもどうかと思い、そのまま何も言わずに代金をお支払いしようと財布から二日分の遊漁料3400円を取り出すために目線を下にやると 「可愛いね。ワンちゃんも一緒かい」と、やや不意を突かれた形で会話が復活したのでした。

振り返ると、窓を明けっ放しで停めて来た車から身を乗り出した相棒がこちらを眺めていたのでした。
犬好きの女将さんは、親切に釣り人用駐車スペースや犬の散歩が出来る広場を教えてくれました。
この2つの情報は慣れない釣り場ではとても助かります。
普段は面倒ばかり掛ける相棒もたまには役に立つもんだなと感心したのでした。

 

夏日の午後

時刻は既に午後1時を回っていました。

車の気温計は29℃と、かろうじて30℃越えは免れましたが 夏の昼過ぎという一番厳しい時間から釣りをスタートしました。
それでも魚影の濃さと木々の作り出すシェードのお陰でそれ程苦労する事無くイワナを釣り上げる事が出来ました。

 

夏の渓流釣り

イワナのミノーイング

 

しかし、陽射しが強く高水温の状況では反応が有っても上手くバイトに導けないケースが多々ありました。
そこで、温泉を探しながら支流を転々としてみることと致しました。

7月にもなると何処も藪が濃くて簡単に入渓出来そうな場所が見つかりませんでしたが、時間も差し迫った午後4時頃ようやく入渓点を見つけ水辺に降りる事が出来ました。

バイカモが水になびく美しい流れでしたが、短時間で慌ただしく雑に釣り上がったせいか釣果は有りませんでした。

渓流とバイカモ

 

七夕の由来って何だったかな

釣りを終え、先程見つけた温泉に入り、晩御飯は河原の駐車スペースにて冷凍物のチャーハンと餃子で簡単に済ませました。

この日、夜勤を終えてそのまま現地に来ていた為、時刻は7時と早いのですが眠くて堪りません。
が、そんな事お構いなしの相棒は、夏の夕暮れを満喫するかの様にフラフラと歩き廻ります。

 

夕暮れの渓流釣り場渓流釣りで車中泊

 

「もう寝ない?」
こっちの気持ちを知ってか知らずか、はしゃぎ回る相棒の気が済むまで待つことにします。
ただ、空を見上げれば満天の星々が僕たちを包み込んでいたのでした。

そう言えば、七夕だったなぁ。

昔は、隣町の商店街の七夕まつりに行く事が楽しみで指折り数えたものでしたが、最近では仕事に追われるせいか、それとも釣りに夢中に成り過ぎるせいか不意に思い出す程度と成っていました。

 

渓流から見上げる七夕の夜空

でも、この星空を見たらまた特別な思いが蘇えってきました。
織姫と彦星が年に一度だけ再会する特別な日だったかな?明日は良い釣り出来るかな?
そんな事を考えながらようやく眠りに付く事が出来たのでした。

 

快釣の2日目

翌日は晴天に恵まれ、朝から気分良く釣りをスタートしました。

渓流ルアーフィッシングの朝

 

尺ヤマメに始まり。イワナも数多く相手をしてくれました。
ヤマメは体高が高く、イワナはでっぷりと太い。
この川が健康な証ではないでしょうか。

 

夏ヤマメのルアー釣り夏ヤマメと夏イワナ渓流トラウトとファイト

 

陽が高く成る頃、車で待つ相棒を気遣って木陰に車を停められる上流域へと移動したのですが、ここでも清涼な流れから花崗岩の色に溶け込む金色のイワナが相手をしてくれました。
魚体に散りばめられた様々な色の斑点が七夕の夜空を思わせます。

 

木漏れ日のイワナ黄金のイワナ

 

魚影の濃さからついつい夢中に成って、先へ先へと進んで行ったのですが、石の上に乗った熊の糞が僕に冷静さを取り戻させました。

渓流釣りでクマの気配

 

ただ、これで尻尾を巻いて逃げている様では甘い等と強がりを言って別の区間を釣る事としました。
保険を掛けてなるべく登山道沿いの人の気配が有る場所を選ぶところが情けなくもありますが、安全が第一であります。

 

渓流ルアーフィッシング

 

倒木が良い雰囲気を醸し出しますが、ルアーをトレース出来る距離が極端に短い事からZANMAIのソリスト50MD2FSに頼る事としました。

石の裏にキャストが決まると黒く長細い影が現れたのです。
そいつはまるでブラックホールの如く、フラッシングを繰り返していたルアーの光を吸い込みました。

途端にロッドが絞り込まれ、水面では黒とオレンジが交互に瞬いていました。

 

倒木の渓流ポイント

ザンマイ・ソリスト50MD2FSにイワナ

野性味溢れる勇ましいイワナが今回の釣行を締めくくってくれたのでありました。

 

帰宅後、7月7日の遊漁券を見てついつい「七夕」由来が気に成って検索してみました。
色々な説が有る様だけど、僕も年に一度7月7日の「七夕」にしか釣りに出掛けられない様な事態に成らぬよう、日頃から勤勉に努めようと心したのでありました。

 

タックル

ロッド:ジャクソン カワセミラプソディー 512ULL / 522L
リール:シマノ ヴァンキッシュ C2000HGS
ライン:YGKよつあみ G-SOUL PE X-3 0.4号
リーダー:YGKよつあみ N-walker ナイロン 4lb.
ルアー:ジャクソン 奏50 トラウトチューン アーティストFR70
     ZANMAI ソリスト 50MD2FS

撮影機材
カメラ:Nikon D5200
レンズ:SIGMA ズームレンズ 18-250mm

ロケーション
長野県 千曲川水系

木下 進二朗

PHOTO & TEXT

[IN THE FIELD] The second angler
木下 進二朗

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