眠れる川の猛者 [渓流と湖の釣り/IN THE FIELD vol.26]

眠れる川の猛者

眠れる川の猛者

 

1年で最も長い月

渓流釣りの解禁日には地域差が有り早い所では2月中頃、遅い所では4月頭から等、それぞれ漁協が管轄する河川の状況を把握した上で定められているようです。
僕が足を運ぶ地域は平均的な3月1日を境に釣りを解禁しています。

2月に入った頃には、俗に言う「禁断症状」が出始めるのはきっと僕だけではない筈です。
OFFシーズン中に鈍った体を慣らすべく近所の裏山を歩きながら遠くに見えるフィールドに思いをはせていました。

遠くにある渓流を想う

 

行こうと思えば既に解禁を迎えた河川に行けば良いだけの話しではあるのですが、仕事の都合や予算なんかが邪魔をする訳です。
折角釣友からお誘い頂いた2月の下伊那地方の解禁日も行きそびれてしまいました。

それに追い打ちをかけるかの様に今年のサクラマスは例年に無く良く釣れていると聞きます。
こうなると「はぁ~。釣りしたい。」が口癖の様に出てきます。

更に今年はうるう年という事も加わって禁漁日が1日長い訳であります。
解禁を待ち侘びる身には悲劇的ではあったのですが、この長く成った1日のお陰でローテーション制にて働く僕には偶然3月1日が休日に当たる幸運と成ったのでありました。

 

釣り欲開放

カウントダウンを重ねる事29回。
ようやくこの日を迎える事が出来ました。
雨男と言われ続けてきた僕ですがこの日だけは神様も味方をしてくれた様で気合が空回りして早く着きすぎた河原には星が瞬いていました。

夜明け前の川

 

相棒、ウェルシュコーギーの散歩をさせるついでに川の様子を伺います。
ザーザーと音を立てて流れる川。
ほんの数カ月、間が空いただけなのにこんなに懐かしく感じるものなのでしょうか。
より一層の期待がこみ上げてきました。

渓流解禁

相棒はまだ遊び足りなそうにしていましたが、辺りが明るくなり始め釣りが出来そうな光量と成ってきたので早速準備に取り掛かりました。

ウェーダー、シューズ、ベストとそれに愛竿カワセミラプソディー562Lにラインを通して準備完了。

河原に降り立ち早朝の凛とした空気をいっぱいに吸い込み深呼吸した後、シーズンの幕を開ける第1投を放ったのでした。
リールのスプールから放出されるラインをサミングする感覚やリーリングやトゥイッチング。
シーズンを通して考えれば何万回と繰り返してきたはずの動作全てが新鮮に思えました。

肝心の魚はというと、開始から1時間程経った頃に淵のカガミに成った水流の緩やかな場所からルアーとの距離を一定に保ちながら付いてくるといった渋い反応を見せてくれただけでありました。

 

橋の下で

 

解禁日前には成魚放流されている事に加えて、去年からの居着き個体のプレッシャーがリセットされ良い釣りが出来るのではないかと淡い期待を抱いていたのですが、そう甘くは無い様です。

 

思い切った選択

前述の様に浅い流れにいる今年の放流魚はイマイチな反応だった為、視点を変えて淵の最深部に眠るであろう居着き個体にアプローチを掛けてみようと思った訳であります。

先ずは最近購入したばかりのスプーン、アドロワ7gを流れに乗せながら小刻みなリフト&フォールで誘います。
ボトムにはかなり石が入っている様でPEラインを通じてその感覚が伝わってきましたが、心理的に根掛を恐れてレンジを下げられません。

そこで、手持ちのプラグで最もスナッグレス性に優れると思われるブラックバス用のプラグ、フローシャッド1を選択しました。

ボトムパターンで釣れたシーバス▲ 今年の初釣りにてボトムパターンで釣れたシーバス

フローティング設計にする事で障害物回避能力を高めながらもディープダイバーの持つ深行力を活かして深場のポイントをダイレクトに通過させる狙いです。

この選択がズバリ的中したのでありました。

コツコツと石にコンタクトする感覚を数回数え、ルアーが足元のブレイクに戻って来た辺りでした。
リールのハンドルが動かなく成ったのですが、OFFシーズンというブランクが空いていた僕の頭には「?」マークが浮かびました。

突如鳴り響くドラグの音でやっと事の成り行きを把握したのでした。
ただ、トラウトにしてはデカすぎる。だとすれば二ゴイかウグイかであろうと勝手に決めつけ、やり取りの感覚を取り戻すには持ってこいの相手だとさほど緊張感なく対応していた直後にみせたテールウォークはスチールヘッドさながらのド迫力なものでありました。

開いた口が塞がらないとはこの事で、と同時に一気に高まる緊張感。
一瞬見ただけで手持ちのランディングネットに収まらない事も解かりました。
幸い掛けた場所が広く水深もあった為、時間を掛けていなした後に浅瀬にランディングする事が出来ました。

63センチのワイルドレインボートラウト

釣り上げた魚にメジャーを当てる事など殆どしないのですが、流石に気に成り計ってみたところ63cmありました。

 

ワイルドレインボー63センチ

ハッキリとは言い切れないですが、おそらく何年かこの川で暮らしてきたワイルドなレインボートラウトであるかと思います。
このサイズであれば野鳥等に襲われることもそうは無いでしょうから、釣り人が唯一の敵であると言えそうです。
禁漁期間中にゆっくりと眠っていたであろう川の猛者を呼び起こしてしまったシーズン最初の釣行でありました。

 

巨大マスをリリース

 

タックル

ロッド:ジャクソン カワセミラプソディー562L
リール:シマノ ツインパワーC2000HGS
ライン:YGKよつあみ G-soul PE 0.6号
リーダー:YGKよつあみ ニトロントラウトグレン 5lb.
ルアー:ジャクソン フローシャッド(フローワン)アーティストFR70 ・シーレーベル アドロワ7g

撮影機材
カメラ:Nikon D5200
レンズ:SIGMA ズームレンズ 18~250mm

ロケーション
伊豆半島河川

 

木下 進二朗

PHOTO & TEXT

[IN THE FIELD] The second angler
木下 進二朗

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