アングラーのためのカナディアンカヌー

アングラーのためのカナディアンカヌー

 

水深は、たったの15センチ。そんな泥質のドシャローエリアのミナモを忍者の如く音もなく漕ぎ進み、その先にある沢筋のインレットへ。
岸伝いにアプローチできないこのスポットでは、夏のこの時期、かなりの確率で、それも、ほぼファーストキャストで大物を仕留めることができる。

さて、この様なシチュエーションは、カヌー乗りだけの独壇場と言ってもいいだろう。
フローターでも少々厳しいはずだ。

インディアンの舟艇に起源を発するカナディアンカヌー。
この小舟は、その実用面もさることながら、休日の一日を特別な時間と空間に塗り替えてしまう魔法のような魅力を持ち合わす。
各所で講習会などが開催されているから、是非、操艇術をマスターしてみてはいかがだろう。

本編では、カナディアンカヌーを釣りに活用するうえでの基礎知識をご紹介していきたいわけなのだが、最初にひとつだけ言っておかなければいけないことがある。
先程、『実用面』という言葉を使用したけれど、実は、釣りにおけるカナディアンカヌーの実用性は案外、限定的。ということ。
長所と短所を理解した上で、是非、魔法のような魅力に憑りつかれていたただきたい。

 

〈 知識編 その1 :長所・短所 〉
〈 知識編 その2 :道具 〉
〈 実践編:操艇・釣り場へのアプローチ 〉

 

カナディアンカヌーとバス釣りタックル

 

〈 知識編 その1 :長所・短所 〉

 

カナディアンカヌーの長所

① 見た目や雰囲気の魅力

バスボートのようなパワーボートもカッコイイが、カナディアンカヌーにはナチュラリスト好みの独特な雰囲気がある。穏やかな湖面に漕ぎ出せば、まるで絵画の如く一瞬で自然の中へと溶け込んでいく。そしてそこには、究極の癒しが待っているだろう。
船外機や魚探を使用することのないスタイルには、「できる限り魚と対等に向かい合いたい」といった感性の持ち主にもベストマッチといえる。

② 自在に操艇することが可能

カナディアンカヌーの中には、激流の中、大小の岩を巧みにかわしながら川を下りきってしまえるだけの優れた運動性能を持ち合わせているものも多く存在するが、こと、止水域での釣り用途となると、もう少しおとなし目で、安定性などを重視したタイプほうが、落ち着いた釣りができるだろう。
ただ、性格に多少の差があっても、これらは全てカナディアンカヌーであることに違いなく、ある程度の練習は必要となるものの、パドル1本で直進はもちろん、旋回や横移動、バックなど、一人でも自在な操艇が可能となる。(強風時を除く止水域)

様々なパドルワーク(漕ぎ方)を使って艇を操る行為は、それ自体、実に楽しいものだ。
もともと狩猟などの際、水音を立てずに獲物に接近する術として考えられたというインディアンストロークでは、パドルのブレイド(水を掻く部分)を水面上に持ち上げることなく、静かに、そして連続的にカヌーを漕ぎ続けることが可能であるため、こちらは釣りにもうってつけだ。(サイレントストロークともいう)(実践編参照)
水辺のクマに、こちらの存在を気付いてもらえず、接近遭遇。肝を冷やしたなんてことがホントにある。

また、カナディアンカヌーは、比較的軽い力で推進力を得ることができる。著者はレッドコアラインでのレイクトローリングで、12時間、漕ぎ通したことがあるほど。
もちろん二人で漕げば、更に楽チンだ。

③ シャローに強い

喫水(船の水の中にある部分)が浅いため、水深が10センチもあれば、浮かぶことが可能。環境にダメージを与えることなく、シャローやウィードの中にも容易に入っていくことができる。

④ 一人で運ぶことができる

細長いカヌーの真ん中のあたりには、センタースォート(ヨーク)という担ぎ棒が配置されており、一人でも担いで運搬できるように工夫されている。
ルーフの低い車であれば、カートップへの着脱も一人で行うことができるだろうし、場合によっては階段の上り下りだって担いだままでイケてしまう。(実践編参照)

カナディアンカヌーをカートップする

 

カナディアンカヌーの短所

カナディアンカヌーに対しては、のんびりとしたファミリーイメージを持つ人が大半であろう。
穏やかな日和であれば、これは実に正しい。
だが、そんなイメージが思わぬ事故につながることも。
PFD(ライフジャケット)の着用、それから天候によってはカヌーに乗ること自体、断念する勇気を持つことが絶対の条件。
実は結構トンガッた性格を持っているのが、カナディアンカヌーなのだ。
それでは、具体的な短所を見てみたい。

① ひっくり返る (ことがある)

沈(ちん)という。
カヌー最大の特徴である高い運動性能と表裏一体なのが、安定性の悪さだ。
喫水が浅いから、無理すると “ ツルリ!”と船底が水面を滑って、転がるようにひっくり返る。(船底形状などにより安定性は変わります。)
カヌーは沈するのが当たり前の乗り物。カヌー乗りなら、そう心得るし、頭からズブ濡れになっても笑っているが、アングラーの場合には、そう簡単に割り切れるものでもないだろう。
タックルの全てが水没!なんて、想像するのも恐ろしい。
だから、もう少し安定感が欲しい。そう思うシチュエーションは、確かにある。
(遠投しようと、大きく体重移動させたりするのは危険だし、大物がヒットした時にも冷静に! ちなみに著者は、釣りでの沈はありません。)

② 風に弱い

風沈(かぜちん)なんて言葉もあるくらい、風は厄介だ。
釣りの場合、もし強風下なら、乗ること自体を諦めるし、荒天が予測できる状況であれば、これも同様だ。

一番恐ろしいのは、天候が急変して、強風吹き荒れる状況の中、一人、湖上に漕ぎ出していた!なんて場合。
先程まで穏やかだった湖面にはウサギがピョンピョン(波頭が砕けて一面白波となる状態)。
笹の葉で折られた船の如く、ただ水面にペタン!と、のっかっているだけのカナディアンカヌーは、風下を目がけて一気に吹き流されていくし、場合によってはコントロール不能の事態に。生命の危険すら考え得る。

ヨットの要領でハル(船体)に受ける風を巧みにコントロールしながら、パドルワークを併用して推進力に変えてしまう!なんていう強者も存在すると聞くが、普通は必死で沈から免れようとするだけで精一杯ではなかろうか。
(季節や状況によっては、沈と、その後のアクシデントまでをも想定して、あらかじめウエットスーツやドライスーツ等を着用、ハイポサーミア(低体温症)の防止策を講じておく必要がある。まぁ、とことんやろう!という人の話ではありますが。)

③ カヌー OK ! でも、カヌーからの釣りはNG ! そんな湖もある

アングラーが人命に関わる様な出来事を引き起こせば、その湖ではすぐにそうなる。
だからアングラーの安全への意識がとても大切。
また、ボート屋さんを擁護する目的で、『自前』はご遠慮を!というところがあったりもする。

 

カナディアンカヌーと釣り

 

〈 知識編 その2 :道具〉

 

必要となる道具は様々で、季節要因にも大きく左右される。
ここでは、シーズンを通じて、最低限、これが無いと始まらない、そんな当たり前のところを中心にご紹介したい。

 カヌー

ウッドストリップカナディアンカヌー

カヌーはお池のローボートとは異なり、進行方向へ向いて着座する。
カヤックで釣りをする人もいるが、今回のテーマは、あくまでもカナディアンカヌー。
カナディアンカヌー(オープンデッキ・カヌー)では、前後に1名ずつ、つまり、通常2人が座れるようにシートが設けられているものが多い。
2つのシートの位置は艇のセンターから等間隔にあるわけではなく、少し後ろ側にずらして配置されている場合がほとんど。(2人乗りした時に少し後ろ側に重心が来るようにできている。)

1人しか乗らない場合には、スターン(船尾)側のシートに着座し、バウ(船首)側のシートを空き座席にするのが基本となるが、この時、これまでの感覚でそのまま座ってしまうと重心が後ろに偏りすぎてしまうため、今度は180°艇の向きを旋回させて、センターに近い側のシートに座ることで重心位置を調整する。(重量物の積載がない場合)
つまり、ソロ(1人)と2タンデム(2人)では、カヌー自体のバウの向きが入れ替わる。

 

 パドル

カヌー用ウッドパドル

ボート風に言うと“オール”だが、カヌー用語では“パドル”となる。
タンデムの場合、基本的には右側か左側、どちらか一方の側を漕ぐように担当を分担するが、どちらか1名(止水域なら基本はスターン・マン)は最低限の操艇術をマスターしているのが良い。

さて次にソロの場合であるが、「左右交互に漕ぐ。」は、不具合も多く現実的ではない。
あくまで基本の話ではあるが、例えば右利きの人なら、右側のみを漕ぐ。
「それだと左にどんどん旋回して、真っすぐには進まないのでは?」と言う声が聞こえて来そうだが、そこを真っすぐやるのが、カナディアンカヌーの操艇の基本。
前述のインディアンストロークを含め、色々なパドルワークが存在する。(実践編参照)
ソロの場合、何らかのアクシデントでパドルが流されてしまっても対処できるよう、予備のパドルも積んでおきたい。

 

PFD(ライフジャケット)

着用なくして、乗るべからず!絶対の条件だ。
命綱ゆえ、間違っても座布団がわりなどにしてはいけない。圧縮されると、浮力も落ちる。

カヌー用PFDライフジャケット

▲ 操縦に免許が必要な釣船、船外機付きボートなどの『小型船舶』では、『桜マーク』の付いた、国の安全基準に適合したライフジャケットを着用する義務がある。
動力源を持たないカヌー等なら対象外ではあるものの、それでも、きちんと浮力の確保された信頼できるものを使用したいし、桜マーク付きと同様、自分の存在をアピールするためのホイッスルも携帯したい。

 

 
スローロープ(救命ロープ)

もし沈したなら、必ず、ハル(船体)やガンネル(縁の部分)など、艇のどこかを掴んでいたい。(その後、カヌーを起こして、水を掻き出す。)
あってはならないシチュエーションだが、強風時などで、艇と人間が離ればなれになってしまうのはとても危険だ。
釣りなら、全長の短いものでもいいので、是非、備えておきたい。

カヌー用スローバッグ

▲ ロープ端を持ち、袋ごと救命対象者に向けて投げると、中のロープがスルスルと伸びていくしくみ。釣りで使うようなら、既に大ごと。ではある。

 

ビルジポンプ

『ビルジ』とは船底に溜まった水のこと。
雨天なら、艇内に溜まった雨水などを掻き出すものがあると重宝する。
実際には『ポンプ』である必要はあまりなく、半分に切ったペットボトルなどでもいい。

 

〈 実践編:操艇・釣り場へのアプローチ 〉

 

〈 知識編 〉で、タンデム(2人)でカナディアンカヌーを楽しみたいという場合でも、どちらか1名は最低限の操艇術をマスターしているのが良いと述べた。
つまり、カナディアンカヌーのオーナーになろうとするなら、単独でも艇を操ることができるようになる必要があるし、タンデムで使うなら、いつ何時であっても自分が船長であることを忘れないようにしたい。
そして、天候の安定している季節や、陽気のいい日だけ楽しむくらい、心に余裕があったほうがいい。

オマケ程度の動画で心苦しいが、ソロでの操艇や、艇の運び方をご覧いただきたい。
カヌー教室のつもりはないし、あいにく大した腕前も持ち合わせていないので、ここは「なるほど、こんな感じか!」と、その雰囲気だけを感じ取っていただきたい。
そして、ご興味がおありなら、やはり、キチンと学ばれることをお勧めしたい。

釣果やサイズを追い求めるだけが釣りではない。もしかすると、そんなことを考えてしまう貴方が誕生するかもしれない。

 

▲ 【ルアーライフ】 アングラーのためのカナディアンカヌー(運搬)

 

▲ 【ルアーライフ】 アングラーのためのカナディアンカヌー(操艇)

 

(ア)

関連記事

ページ上部へ戻る