トルザイトを考える。<その3:ラインコンタクト編>

 フジのガイド、トルザイトは形状の工夫でラインに優しい。

 ● 今までのsic以上の性能で、より軽い。であれば理想的。

前回のお話しで軽さについては、お分かりいただけたと思います。
でも、その他の性能面、「今まで以上。」という表現はチョット難しい。
長所は短所、短所は長所なんて場合もある。。?
様々な釣りのスタイルがあるから、何処が今までよりイイか?悪いか?は人それぞれカモしれません。

考察② ラインコンタクトに関わる性能。

当然ですが、ガイドの中にはラインが通るワケで、キャスティングの際や、魚とのファイト中には、ラインとガイドの接触の圧力もより高まります。
ラインを傷めにくいガイドはsicか?トルザイトか。。?

ある一定の条件で、ガイドにフロロラインを擦り付け、ラインが切れるまでの擦り付け回数を測定した実験では、トルザイトのほうが、4倍ラインが長持ちした。
フジではこの様な実験結果を発表している。
トルザイトのほうが、極めてラインに優しいという結論。

驚異的な結論を導き出したトルザイトの秘密はなんだろう。
様々なトルザイトの性質を見ていきたい。

・トルザイトの性質その①:スベスベ。

鏡面精度が高く、摩擦抵抗はsicの1/5!
だから、ラインに優しい。

・トルザイトの性質その②:ヒロビロ。

リングをスパッ!と縦に切ったとき、その断面の形状に工夫がある。
だから、本当はトルザイト・マテリアルそのものの物性ではないけれど。。
Sic断面形状が、ほぼ、まん丸なのに対し、トルザイトは扁平。そう、つぶれた形状だ。(上写真参照)
これにより、リング表面に接触するラインの長さが約2倍となる。
逆に接触する圧力は分散され、1/2となる。
集中的な力がかからないから、ラインに優しい。

・トルザイトの性質その③:熱しにくくて冷めにくい。(冷めにくくて温まりにくい。)

熱伝導率はsicの方が高い。
つまり、トルザイトの方が熱が伝わりにくく、放熱性が悪い。
これはマイナス要素といえる。

特にナイロンラインなどは熱にスゴク弱いから、出来るだけ速やかに熱を逃がし、熱のこもりにくい性質のほうが歓迎できる。
青物などが、一気に走って、ドラグが鳴りっぱなし。なんてコトを想像すると、チョット不安になる。。?
ただ、先の実験結果の様に、4倍ラインに優しいというワケだから、スベスベ性能とヒロビロ性能で、補って余りアル。ということかもしれないが。

少し脱線するけれど、「温まりにくい。」という性質にも少々不安はアル。
それはガイドの凍結。
あまりにガイド径の小さなモノであれば、厳寒期の釣りには適さないカモしれない。

フジのガイド、トルザイト。放熱性を考えたい。

・トルザイトの性質その④:傷つきにくい。

まず、トルザイトは硬いか?ということから。
結論は「十分硬い」。でも、sicには劣る。という感じ。
薄さの原点でもある、粘性があって割れにくい。そんな性質に起因しているのカモしれない。

あえて傷つきにくい。とアピールする根拠としては、前述のヒロビロ性能が起因している。
ガイドにかかるラインの圧力が1/2になった結果、泥水の付着したガリガリのラインの擦りつけ試験を行なっても、sicと同等のキズの深さであった。というコトだ。

ここでまた少し脱線。
ここに、sicと同レベルまでは表面が磨耗したトルザイトがあったとしよう。
まあ、そんなに磨耗するまで使い込まれることは実際にはないのカモしれないから、あくまでも仮定のお話し。
この時、スベスベ性能は既に期待できない可能性が考えられるから、あとはヒロビロ性能ということになる。
仮にヒロビロ性能による発熱量の分散だけを期待して青物の猛ダッシュと向き合った時、放熱性のマイナス面を克服し、はたしてsicを上回ることができるだろうか。。

フジのガイド、トルザイトはsicよりは柔らかい。

いかがでしょうか?
実際に使ってみる前の考察としては、こんなところでしょうか。。?

最後はチョット後ろ向きな発言もありましたが、千載一遇のチャンスをモノにしようとするアングラーなら、ガイドをすり減らせたまま、釣りをしていること自体ありえないお話しカモしれませんネ!
だいたい、セラミックという素材自体、放熱性に優れることで良く知られる素材。
あくまでもトータル的な評価が妥当というコトでしょう。

トルザイトは各社とも採用を始めたばかり。
もしかすると、まだ誰も気付かないウイークポイントもあるかもしれない。
でも、市場はメーカーの実験場ではないから、開発したフジにしても、採用を決めたロッドメーカーにしても、各社、とても強い自信があるのは確かなこと。

適材適所でsicとトルザイトのミックスとか、確証の持てる分野のロッドなどから、順次トルザイトの勢力が伸びてくることは間違いないでしょう。
前向きに、32年ぶりの期待のエース、トルザイトに大いに盛り上がりたいトコロです!

(ア)

そうそう、
海外遠征とかのロッドって、遠征先でのガイドリング破損のリスクを避ける意味で、あえて、外れることはあっても割れにくい、ゴールドサーメットリングとかのものを選ぶ人がいる。と聞いたことがあります。
トルザイトも、薄くしなければ、その分、割れに対するリスクは更に減るのカナ?
強度面をアピールするトルザイト製ガイドがあっても面白いカモしれません。
(最後に、ふと、思いましたので、蛇足ながら。。)

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